赤沢保存車輛図鑑(2)
<客貨車>
   

蒸機内燃機モーターカー客車貨車営業運転用車輛


客 車
   
客車は車体のみのものを含め、合計6輛が保存されている。うち屋内(屋根下)保存は貴賓車と上運理髪車の2輛のみ。他4輛は、かつては保存線の営業運転にも供されていたものの、新製客車の導入で失職し、今では本線上などで詰所・待合室代用として利用されている。しかし保管状態が芳しくないものが多く、気にかかるところである。
客車の塗色は、現役末期は鮮やかな赤であったが、現在赤沢に保存の客車はいずれもマルーン(上運色のDLと同じ塗料か?)に塗られている。


■C型客車 王営No.1
(岩崎レール工業?)


▲2枚とも 2003.5.11

後述の貴賓車とほぼ同じデッキ付のスタイルをもつC型客車。
 


■C型客車 上運No.3(右)


▲2003.5.11 

2段窓のC型客車。現在は上記の王営No.1と手を繋いで
丸山渡で営業列車クルーの詰所代用として用いられているが、
2輛ともに外板の褪色が目立つなど状態は芳しくない。 
 


■B型客車 上運No.17
(岩崎レール工業)


▲2003.5.11


C型客車の全長をそのまま伸ばして、アーチバー台車を履かせたような客車。岩崎レールのレディメイド品で、北海道に同型車の納入実績が多い。末期の木曽谷のB型客車(ボギー客車)としては、北見営林局より転入してきた半鋼製ボディの上運No.14(廃止後北海道の丸瀬布に里帰りし現存)と並んで異端の存在だった。
 保存線開業当初は営業運転に供されていたが、現在はウルシ沢支線の末端の側線に留置されている。やはり褪色がひどく、台枠に腐食もみられるなど状態はよくない。

→細部写真
 


■特別展望客車(貴賓車)
(岩崎レール工業)


▲2003.6.28  F40i


ファンの間では俗に貴賓車とよばれている2軸客車で、そもそもは1957年の皇太子殿下の赤沢神宮備林行幸に併せて誂えられたものらしい。ディメンションは上記の王営No.1客車と同様ながら、屋根にはガラベンが載り、妻扉は観音開き。そして内装はニス塗りで回転式の白カバー付き肘掛椅子を6脚備える。現役時代も最後まで車体に一切のレタリングが施されなかったという点が、この車輛の特殊性を物語るかのようだ。
 赤沢の客車では唯一屋内で保存されており、状態も良好である。

→細部写真
 


■上松運輸営林署 理髪車


▲2003.6.28


木曽の名物であった理髪車―所謂“移動床屋”のうちの1台。現役末期にマスコミにも取り上げられ有名だった上松運輸営林署の理髪車である。
 車体はカマボコ型屋根+一段下降式窓仕様の小型B型客車の転用。台車は、少なくとも理髪車となって以降は、岩崎レール製のNo.1083+No.1084を履いていた(下写真参照)が、現在は富士重工のモノコック式台車(番号不詳)に振り替えられている。
 デフォルトの台車は、恐らくは営業運転用客車の最新増備車(あすなろ号?)に転用されたのではなかろうか。


▲1989年当時の上運理髪車。左側の台車に“1084”のレタリングが読める。
 

→細部写真
 


■B型客車 王営No.11
(車体のみ・待合室代用)


▲左:2003.6.28 右:2003.5.11


妻面に扉を有する引き違い窓の車体+運材台車利用の足回りという、木曽のB型客車(=ボギー客車)の中ではもっともポピュラーなスタイルだったうちの1台。
 B型No.17や2台のC型ともども、保存線開業当時は営業運転に就いていたものの、今は台車を外され記念館前の出札口の脇で待合室として余生を送っている。
 恐らく台車は、現在の営業用客車のうち1989年増備のグループの1輛に転用されたものと思われる。



貨 車

■制動車(カブース) 制5


▲2003.6.28


ファンのあいだでは“木曽のカブース”として親しまれている、いわゆる車掌車で、空制化後(=無煙化後)の本線運材列車のしんがりを務めた。車体の全長より全幅の方が長い、いかにもユーモラスな車輛。
 足回りは木製運材車の流用で、屋外保存ゆえに台枠がひどく痛んでいるのが気にかかるところ。なお、現在の塗色は客車と同様ノンオリジナル(本来は鮮やかな赤)である。


■フラットカー
<台車:No.1888(手前)+No.1887(奥)>
(日本特殊機材)


▲2003.6.28


運材台車を利用したフラットカーで、保存車というよりは保存線の裏方的要素の強い存在といえる。足回りは日本特殊機材製の板バネ式運材台車。番号はNo.1887+No.1888だが、ナンバーは近年上から塗り潰されてしまっている。


▲フラットカーののサイドビュー 2012.7.28


■転倒式砂利運搬車
上運6(左)+上運18(右)
(岩崎レール工業  1956/1957)


▲2003.6.28


岩崎レール製の、いわゆる荷台転倒式トロリー。なりは小さいながら、積荷の排出方向が回転式で自在に調整できるじつに本格的な造りである。
 現役時代は上松運輸と王滝にてそれぞれ保有していたが、赤沢に残る2輛はもと上運の所属車。保存線の建設工事の際には、酒井のNo.131とともに活躍したことが知られており、現在も保存と保線用を兼ねて存置されている。

→細部写真
 


■王営 2軸タンク車  No.?
(岩崎レール工業)


▲2003.6.28


王滝営林署が、作業地で使用する動力車や集材機械の燃料輸送に供するため保有していたタンク車。この個体は、WB900mmで小型の楕円タンクを積むタイプで、該当車はNo.17・24〜27・30のいずれかだが、目下未確認。


■王営 2軸タンク車 No.28
(岩崎レール工業  1954)


▲2枚とも 2003.6.28

こちらはWB800mmで大型の楕円タンクを積むタイプ。         
現状では上の写真のように台車とタンク部が別々に保管されている。


▲台車とタンクが生き別れる?前の姿。
原画ではタンクのレタリング(番号含む)もかろうじて残っているのが読み取れた。 1992.8.29


■No.120ディーゼル機関車用ロータリーヘッドと
C型客車?下廻り


▲2003.6.28


ロータリーヘッドは、現在は寝覚の床入口に酒井B型8t(No.98)とともに保存されている、酒井S型除雪機関車No.120(下写真)の装備品。
 No.120はそもそも赤沢に保存されていた。ところが、'87年の保存線の開業にあたって、運転の増強用に寝覚の床に保存されていたNo.86を搬入整備することになるも、置き場がないために、このNo.120がトレードのかたちで寝覚の床に移動されてしまったわけである。ところが、なぜかロータリーヘッドだけは赤沢に残されたまま今日に到る。
 ヘッドが載っている台車は、一見C型客車のもののようだが、詳細不明。

▼寝覚の床入口に保存のNo.120本体 2003.3.16

 


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